生成AIは、業務効率化や新たな価値創造を目指す多くの企業で活用されています。
このページでは、生成AIを活かせる具体的な業務と、実際の活用事例を12選紹介します。作業内容が決まったルーチンワークや顧客対応、自動化が難しいと思われていた社員教育、さらにはコンテンツ制作といったクリエイティブワークに至るまで、生成AIの応用範囲は広がっています。
生成AIの具体的な活用方法を知り、自社の業務に応用するためのヒントをつかみましょう。
この記事でわかること
生成AIを活かせる業務
生成AIは、業務効率化や業務品質の向上に大きく貢献します。ルーチンワークや顧客対応、社員教育、さらにクリエイティブワークまで、生成AIを活用できる4つの業務分野を詳しく解説します。
作業内容の決まったルーチンワーク
1つ目は、作業内容の決まったルーチンワークです。
例えば、データ入力や請求書の処理、在庫管理など、決められた手順で繰り返し行われる作業では、生成AIの自動化技術を導入することで効率化が図れます。特に、OCR(光学文字認識)技術と組み合わせることで、紙の書類からデジタルデータを正確に抽出し、その後の処理を自動化することが可能です。また、メールやチャットでの定型的な問い合わせ対応も、生成AIを活用することで迅速かつ正確に対応できるようになります。
これにより、人手に頼る作業が削減され、従業員はより高度な業務や創造的な業務に集中できるようになります。さらに、エラーの発生率が低減し、業務品質の向上も期待できます。このように、生成AIはルーチンワークの効率化を実現し、業務全体の生産性を大幅に向上させる重要なツールとなります。
自動応答を利用した顧客対応
2つ目は、自動応答を利用した顧客対応です。
顧客からの問い合わせ対応に生成AIを活用すれば、24時間365日迅速な対応が可能となり、顧客満足度の向上につながります。例えば、AIチャットボットを導入することで、商品の在庫状況、注文状況、店舗情報などの定型的な質問に即座に回答できます。さらに、自然言語処理技術を活用すれば、問い合わせ内容を的確に理解し、適切な情報を提供することができます。
また、音声対応型のAIでは、電話による問い合わせにもスムーズに対応可能で、対応スタッフの負担を軽減し、人手不足の解消にも寄与します。ただし、複雑な質問やクレーム対応には人間のフォローが必要な場合もあるため、生成AIと人の連携が重要です。このように、自動応答を導入することで、業務効率の向上と顧客体験の改善が期待できます。
新入社員の教育や社員の評価
3つ目は、新入社員の教育や社員の評価です。
例えば、生成AIを活用したオンライン教育ツールを導入することで、新入社員は自分のペースで業務知識やスキルを学習でき、個々の進捗や理解度に応じて補足教材を提供することも可能です。また、社員の評価においては、業務データをAIが分析し、客観的な指標に基づいた評価が可能となります。これにより、曖昧な主観評価を排除し、透明性の高い評価を実現できます。
生成AIの活用により、教育コストの削減や社員のモチベーション向上が期待でき、人材育成と評価の精度を向上させる効果が得られます。
コンテンツ作成などのクリエイティブワーク
4つ目は、コンテンツ作成などのクリエイティブワークのサポートです。
例えば、文章作成では、ブログ記事や製品紹介文のドラフトを短時間で生成し、ライターの負担を軽減できます。さらに、画像生成AIを用いれば、広告用のビジュアルやSNS投稿用の画像を独自に制作することが可能です。動画編集においても、生成AIは自動字幕付けや構成案の提案といった作業をスピーディに行い、クリエイターが本来の企画や演出に集中できる環境を整えます。また、アイデアの発想段階でもAIは力を発揮し、キャッチコピーやデザイン案を瞬時に複数パターン提案してくれるため、創造性を刺激するサポート役として機能します。
これにより、作業効率の向上だけでなく、クオリティの高いコンテンツを継続的に生み出すことが可能となります。生成AIの活用は、クリエイティブな業務を支える強力な手段として注目されています。
ルーチンワーク業務への生成AIの活用事例3選
ルーチンワークの効率化を図るため、多くの企業が生成AIを活用しています。こちらでは、パナソニックやヤマト運輸、アサインテクノロジー株式会社が導入した生成AIツールの活用事例を3つ紹介します。
パナソニックコネクトのAIアシスタント
引用元:https://news.panasonic.com/jp/press/jn230628-2
パナソニックコネクト株式会社では、ChatGPTの試験運用において、自社独自の情報については回答が得られない、表示されるデータの引用元が不鮮明であるなどの課題が出ていました。
そこで、自社のWebサイトや既存情報をAIに学習させ、独自の生成AI「ConnectAI」を開発しました。 これにより、多くの社員が自社情報の検索にConnectAIを利用し、営業や顧客対応などに活用、さらに新入社員の教育にも役立っています。
今後はそのデータを、カスタマーサポートセンターの業務に活用するとしています。
ヤマト運輸の荷物量予測システム
引用元:https://www.yamato-hd.co.jp/news/2021/newsrelease_20210803_1.html
ヤマト運輸株式会社は、以前まで人の手で行っていた検品や配送先の決定を自動化するため、AIを活用した配送業務量予測システムと適正配車システムを開発し、導入しました。
さらに、AIによる不在による再配達防止への取り組みも注目されています。事前に顧客へメールなどで置き配やコンビニ受け取りなどの選択肢を提案することで、再配達を減らし、ドライバーの負担軽減と顧客満足度向上を両立させています。 これにより、配送生産性は20%、走行距離および二酸化炭素の排出量を25%削減することに成功しています。
アイサンテクノロジー株式会社はRICOH Cloud OCR for 請求書を導入
引用元:https://www.ricoh.co.jp/case/2006-aisan
株式会社アイサンは、膨大な紙文書の管理に課題を抱えていました。手作業によるデータ入力や検索には多くの時間がかかり、業務効率が低下していたのです。
そこで導入したのが、「RICOH Cloud OCR for 請求書」です。このツールにより、文書のデジタル化と自動分類が可能となり、検索時間が大幅に短縮されました。また、データ入力ミスも減少し、業務全体の生産性が向上しました。
さらに、直近の取引情報が設定されているため、担当者が交代してもスムーズに引き継ぎが行えるようになりました。この改善により、株式会社アイサンは業務の効率化と品質向上を実現しています。
顧客対応を自動化する生成AIの活用事例3選
顧客対応の効率化を図るため、多くの企業が生成AIを活用しています。こちらでは、マウスコンピューター、ゆうちょ銀行、京セラが導入した最新のAIチャットボットや音声チャットボットの活用事例を3つ紹介します。
マウスコンピューター株式会社はsAIチャットを導入
引用元:https://www2.mouse-jp.co.jp/ssl/user_support2/sc_top.html/
2019年末から始まったコロナ禍により、日本でもリモートワークが普及しました。
その結果、新しいパソコンを購入するユーザーが増加し、各メーカーは顧客対応に追われることになりました。そんな中、マウスコンピューターはsAIチャットを導入して、生成AIによる顧客対応に取り組みました。
さまざまなレベルの問い合わせに対し、過去の問い合わせデータを学習させました。さらに、新しく集まる問い合わせ内容も随時学習することで、AIがより的確な回答を提示し、問題解決に貢献しています。
ゆうちょ銀行のAIチャットボット導入
引用元:https://www.jp-bank.japanpost.jp/contact/ctt_chat.html
ゆうちょでは、営業時間外も対応できる24時間体制のAIチャットボットと、人による電話対応を組み合わせた顧客対応を行っています。
「ゆうちょダイレクト」や「ゆうちょ通帳アプリ」などのオンラインサービスに注力ししており、顧客対応においても効率化を図っています。ゆうちょの顧客対応は段階的になっており、最初はAIチャットボットが自動応答して、解決しない場合は有人チャットで対応、それでも対応できない場合は電話で対応を行うようにしています。
これにより、人による問い合わせ業務を軽減させるだけでなく、AIチャットボットや有人チャットで解決できなかった問題をデータ化することで、更なる顧客対応の質を向上させています。
京セラはトランスコスモス株式会社の音声チャットボットを導入
引用元:https://www.transcosmos-cotra.jp/voice-bot-example?utm_source=trans-cosmos.co.jp&utm_medium=voice
トランス・コスモス株式会社は、顧客からの問い合わせに対し、音声認識と自然言語処理、音声合成を組み合わせた音声チャットボット「ボイスボット」を提供しています。
このボイスボットの活用事例が、京セラドキュメントソリューションズジャパン株式会社の顧客対応です。 顧客はガイダンスに従い、会社名や電話番号、注文情報を音声で伝えれば音声ボットがその内容をオペレーターにメールで通知し、顧客へ注文情報の確認を行います。同時に、音声ボットが獲得したデータは京セラドキュメントロシュ―ションジャパンに伝えられ、音声AI完了率や運用レポートなどを受信し、有効性を確認できます。
このように、顧客はフォーム入力などの手間をかけずに、話すだけで注文が可能です。企業側も、受注率や入電状況を把握できるため、業務効率化に役立ちます。
社員教育や評価への生成AI活用事例3選
社員教育や評価の分野でも生成AIが活用されています。ここでは、防衛省や福島市、松屋フーズの3つの具体的な活用事例を紹介します。
防衛省は株式会社ACESのAIを活用
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000044470.html
防衛省は、人事評価や異動にAIシステムを導入する方針を発表しました。このシステムはAIが全てを判断するのではなく、あくまで補助的な役割を果たし、最終的な決定は人間が行います。
導入対象は、自衛官全体の約6分の1にあたる約4万人の幹部自衛官です。この取り組みの一環として、AIスタートアップの株式会社ACESが陸上自衛隊に対して技術活用の助言を行うことが決定しました。ACESはディープラーニングを用いた画像処理技術を主に開発しており、自衛官の健康管理や人事評価を通じて組織全体のパフォーマンス向上を支援します。
これにより、防衛省はAI技術を効果的に活用し、人事管理の精度と効率を高めることを目指しています。
福島市はNECの人事異動支援AIソリューションを導入
引用元:https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/pow/pcai.html
福島市では、NECの「人事異動AI支援ソリューション」を導入し、人事業務の効率化と高度化を図っています。このシステムは、過去の異動履歴や人事情報をAIで分析し、異動候補者の予測や最適な配属先の選定を自動化します。
導入後、異動候補者の抽出時間は48時間から36時間に短縮され、異動案件の処理時間も72時間から60時間に削減されました。さらに、作成した異動案のチェック登録時間は300時間から24時間に大幅に減少し、業務全体の生産性向上に寄与しています。
これにより、専門知識を持つ職員への業務集中や属人化からの脱却が進み、評価・異動の公平性や客観性の向上にもつながっています。
松屋フーズは面接AIのSHaiNを導入
引用元:https://shain-ai.jp/matsuyafoods/
株式会社松屋フーズは、人材採用の効率化と評価の公平性を高めるために、面接AI「SHaiN」を導入しました。
従来の対面面接からSHaiNの導入により、面接の動画が自動で文字起こしされ、評価基準が明確に可視化されました。これにより、評価プロセスの透明性が向上し、HR部門の業務負担も大幅に軽減されました。
また、面接のスケジュール調整や手動でのメモ作成が不要となり、業務効率が向上し、経費削減にも繋がりました。結果として、松屋フーズは質の高い人材を効率的に採用できるようになり、組織全体の競争力を強化することができました。
クリエイティブワークでの生成AI活用事例3選
クリエイティブワークの分野でも生成AIが活躍しています。ここでは、日本コカ・コーラや大林組の設計業務への活用、サッポロホールディングスの事例の3つを紹介します。
日本コカ・コーラはGPT-4とDALL-Eを活用してボトルやロゴデザインを作成
引用元:https://www.coca-cola.com/jp/ja/offerings/christmas/createrealmagic
日本コカ・コーラ株式会社は、12月19日にAI画像生成ツール「Create Real Magic」を活用したオリジナルクリスマスカード作成ウェブサイトを公開しました。
このツールは、12月17日まで渋谷のスクランブル交差点での屋外広告制作にも利用されました。「Create Real Magic」は、大規模言語モデル「GPT-4」と画像生成AI「DALL-E」を組み合わせたプラットフォームで、ユーザーはアカウントを作成後、「テーマ」「シーン」「スタイル」を選択し、自分だけのクリスマスカードを簡単に作成できます。
生成された画像の一部は外部広告やソーシャルメディアで紹介され、消費者に新しい体験を提供するとともに、ブランドの信頼と信用を強化することに成功しています。
大林組は設計業務にAiCorbを採用
引用元:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220301_3.html
大林組がアメリカのSRIと共同開発したAiCorbは、建物のスケッチや3Dモデルを読み込ませるだけで、複数のファサードデザイン(建物の正面から見た外観)を自動生成が可能です。
これは、さまざまな建物のデザインをAIに事前学習させておくことで実現しています。AiCorbを導入することで、顧客の要望をヒアリングし、イメージとの擦り合わせに割く時間や手間を削減、業務の効率化に貢献しています。
サッポロホールディングスはSONYのPrediction Oneを導入
引用元:https://predictionone.sony.biz/case/24sapporobeer/
サッポロビール株式会社では、全社員が課題解決にAIを活用する文化を根付かせるために、ソニーのPrediction Oneを導入しました。
Prediction Oneを用いて営業の売上予測や商品開発、商品カテゴライズの予測の3つの分野で概念実証を実施した結果、現在までに180件以上の企画が立案され、課題解決の手段として活用されています。
導入を決めた理由は、ユーザーインターフェースの見やすさや高い精度、コストパフォーマンスの良さでした。これらの要素により、営業の売上予測や商品開発、商品カテゴライズの予測におけるPoCを行ったところ、ベテラン社員よりは精度が劣るものの、新人社員よりも優れた結果を得ることができました。
まとめ
生成AIは、クリエイティブ業務、社員の評価や教育、顧客対応、ルーチンワークなど幅広い業務で活用でき、業務の効率化やコスト削減に繋がります。
しかし、導入に際してはまず自社の課題を明確にし、無料トライアルを通じてツールの使いやすさや効果を確認することが重要です。この記事で紹介した12の活用事例を参考に、生成AIを業務改善に取り入れることで、生産性の向上を目指しましょう。
無料トライアルを試して自社に最適な生成AIツールを見つけ、導入を検討してみてください。
こちらでは、おすすめのAIツールについて紹介していますので、ぜひご覧ください。