生成AIが自動生成した画像や文章、動画を取り扱う際には、著作権を侵害するリスクが伴う可能性があります。
このページでは、まず著作権の基本的な定義を明らかにし、生成AIが著作権侵害に該当する場合とそうでない場合について具体的に解説します。
また、生成AIによって作成されたコンテンツが著作物として認められるかどうかを、類似性や依拠性といった観点から詳しく説明します。生成AIの著作権に関する基本な知識を深め、安全で正しく利用できるようにしましょう。
そもそも著作権とは?
著作権とは、創作的な表現に対して発生する権利であり、文学、音楽、美術、映画、ソフトウェアなど、幅広い分野の著作物を保護する法律です。
この権利は、創作者がその作品の使用、複製、配布を管理することを可能にし、創作した時点で自動的に発生します。
例えば、小説を執筆したり音楽を作曲したりした場合、その作品は著作権によって保護され、他者が無断でコピーや改変を行うことを防ぎます。これにより、創作者の利益が守られます。一方で、著作権には例外が設けられており、教育目的、報道、引用などの特定条件下では、許可なく利用できる場合があるのです。
また、著作権の保護期間には限りがあり、一般的には創作者の死後70年が経過すると権利が消滅し、作品はパブリックドメインとなり、自由に利用できるようになります。
著作物に該当する8つのモノ
こちらでは、著作物に該当するものを8つ紹介します。
論文や小説、脚本などの言語に関するもの
1つ目は、論文や小説、脚本などの言語に関するものです。
著作物とは、思想や感情を創作的に表現したものであり、独自性と創作性がその本質的な要件となります。論文は、研究者が独自の視点や分析を通じて得られた結論を文章として表現したもので、その構成や記述が著作権によって保護されます。同様に、小説も作者が創作した登場人物やストーリーが盛り込まれており、その独創的な表現が保護対象です。
また、脚本についても、演劇や映画の制作における台詞や場面の構成を通じて物語が展開されるため、著作物と認められます。ただし、アイデアや事実そのものは著作権の対象にはならず、それが具体的な表現として固定化されることで初めて保護の対象です。
楽曲や楽曲を伴う歌詞に関するもの
2つ目は、楽曲や楽曲を伴う歌詞に関するものです。
楽曲はメロディやハーモニー、リズムなどの音楽的要素から成り、創作性を持つ表現とみなされます。一方、歌詞は言葉による表現であり、文章や詩と同様に独自の創作性が認められるものです。これらが組み合わさることで、楽曲と歌詞は一つの著作物として高い創作性を持つ作品と見なされます。
例えば、新たに作曲されたメロディとそのために書かれた歌詞は、それぞれ独立した著作物として認められると同時に、一体としての楽曲全体も保護対象となり、楽曲や歌詞を無断で使用したり改変したりすることは、著作者の許諾がなければ違法となる場合があります。
地図や図面、図表、模型に関するもの
3つ目は、地図や図面、図表、模型に関するものです。
これらは単なる情報の集合ではなく、創作者の創意工夫や独自性が反映されている点が特徴です。例えば、地図の場合、地理的な情報の選択や表示方法、デザインなどに制作者の個性が表れます。図面や図表についても、情報を整理して視覚的にわかりやすく表現する構成やデザインに創作性を伴います。また、模型においては、実物の再現だけでなく、形状や構造に工夫を加えた表現が創作性を持つ場合に著作物として認められます。
これらの著作物は、法律により保護される対象となり、無断で使用すると著作権侵害となる可能性があるので、著作権者の許諾を得ることが必要です。また、使用目的が著作権法で認められる範囲内に収まるかを確認することも重要です。
テレビドラマやアニメ、ゲームなどの映像に関するもの
4つ目は、テレビドラマやアニメ、ゲームなどの映像に関するものです。
これらの映像作品は通常、脚本、演出、音楽、キャラクターデザイン、映像編集といった複数の創作的要素が組み合わさって制作されているため、各要素ごとに著作権が認められることが多く、映像全体としても著作物として保護されます。
例えば、アニメではキャラクターの動きや背景美術、ゲームでは映像演出やインタラクティブな要素が創作性を持つ要因となります。
また、テレビドラマや映画では、シナリオや映像編集、音楽などがそれぞれ著作物として保護対象に含まれるので、利用する際は著作権者の許可を得ることが重要です。
写真
5つ目は、写真です。
具体的には、単なる風景や物の記録ではなく、構図、光の使い方、色彩、撮影アングルといった要素に創意工夫が施されている写真が著作物と認められます。
例えば、プロのカメラマンが撮影した広告写真や芸術性の高い作品は、著作物として保護されることが一般的です。ただし、単純な証拠写真や無作為に撮影された画像などは創作性が認められず、著作物と見なされない可能性があります。
著作物として認められる写真には著作権が発生し、無断での使用や複製、改変することは著作権侵害となる可能性があるので、許可を得るようにしましょう。
絵画や彫刻、漫画などの美術に関するもの
6つ目は、絵画や彫刻、漫画などの美術に関するものです。
絵画には風景画や抽象画、肖像画などが含まれ、彫刻は木彫や石彫、金属彫刻など多岐にわたります。また、漫画はストーリー性やキャラクターのデザインなどが創作性を伴うため、美術著作物として認められることが一般的です。
これらの美術作品は、創作した本人に著作権が発生し、許可なく複製や公衆送信などを行うと著作権侵害となる可能性があります。さらに、これらの作品がデジタル化される場合でも同様に保護対象となり、使用には著作権者の同意が必要です。
コンピュータープログラムに関するもの
7つ目は、コンピュータープログラムに関するものです。
プログラムの設計や実装においては、その独自性や創作性が著作権の保護対象として重視されますが、単なるアイデアやアルゴリズムそのものは保護の対象には含まれません。
例えば、特定の処理を実現するために書かれた具体的なソースコードや、それを基にしたプログラム全体が著作物と認められます。
また、プログラムを動作させるための説明書や関連資料も、独自性があれば著作物として扱われ、無断での複製や改変、配布が原則として禁止され、著作権者の権利が守られるのです。
その他、二次的著作物
8つ目は、二次的著作物です。
二次的著作物とは、既存の著作物を基にして新たに創作された著作物を指します。例えば、小説を映画化した作品や、音楽を編曲して新たな楽曲を作成した場合などが該当します。
これらは、元の著作物の独自性や創作性を活かしつつ、新たな創作が加えられることで、独立した著作物として認められるものです。ただし、二次的著作物を作成するためには、元の著作物の著作権者から許諾を得る必要があり、許可なく二次的著作物を作成し公表した場合、著作権侵害となる可能性があります。
一方で、二次的著作物にはそれ自体の著作権も発生するため、著作権者同士の権利調整が必要になる場合もあります。このように、二次的著作物は元の著作物と新たな創作が融合した特別な性質を持つものといえます。
著作権侵害に該当するケース
生成AIが著作権侵害に該当するケースは、学習データや生成されたコンテンツが著作権で保護された素材に基づいている場合です。
例えば、生成AIが著作権保護された小説や音楽、画像などを無断で学習し、それを基に似たような作品を生成した場合、著作権侵害にあたる可能性があります。また、生成されたコンテンツが既存の著作物と極めて類似しており、独自性やオリジナリティが認められない場合も問題となります。
さらに、生成された文章や画像を商業目的で使用する際、その中に他者の著作物が含まれている場合、明確な許諾がないと法的リスクを伴う可能性があるので、生成AIの利用規約や学習データの構成を確認し、生成コンテンツを使用する前に著作権の適用範囲を十分に理解することが重要です。
著作権侵害に該当しないケース
こちらでは、生成AIが著作権侵害に該当しないケースを3つ紹介しています。
以下の他にも、著作権法第30条から第50条にかけて権利制限規定についての解説があります。生成AIを利用する際は、目を通しておきましょう。
個人的な使用を目的とする場合
1つ目は、個人的な使用を目的とする場合です。
著作権法では、私的使用の範囲内での利用は著作権侵害に該当しないとされています。例えば、生成AIを使って自分だけが閲覧するためのメモや趣味の作品を作成する場合、第三者に公開したり商業目的で利用しない限り、問題となることはありません。
また、生成AIを利用して学習や研究の一環としてコンテンツを生成する場合も、著作権侵害には該当しません。ただし、個人利用であっても、生成したコンテンツが著作権保護された作品をそのままコピーしている場合や、権利者に不利益を与えるような形で利用する場合は、例外的に問題となる可能性があります。
そのため、生成AIを個人的な目的で使用する際にも、元データや生成内容について一定の配慮を持つことが重要です。
引用する場合
2つ目は、引用する場合です。
著作権法では、著作物を引用する際に一定の条件を満たせば著作権侵害とならないと規定されています。引用が認められるためには、引用する部分が自らの著作物と明確に区別されており、主従関係が保たれていることが必要です。
具体的には、自らの意見や議論を補強する目的で、必要最小限の範囲で著作物を引用し、その引用が全体の一部として適切に位置づけられていることが求められます。また、出典を明示することも必須条件です。例えば、生成AIが作成したコンテンツ内で他者の著作物を引用する場合、その内容が議論を補完する形で使われ、出典が明確に記されていれば、著作権侵害には該当しません。
ただし、引用の目的が不適切であったり、引用部分が主張の中心を占めるような場合には、著作権侵害と判断される可能性があります。これらの条件を満たすことで、生成AIによるコンテンツ生成でも引用が適法となる場合があります。
教科用図書に利用する場合
3つ目は、教科書図書に利用する場合です。
日本の著作権法では、教育目的で使用する教科用図書において、一部の著作物を許諾なしで利用できる規定が設けられています。例えば、教育現場で使用する教科書や教材を作成する際、著作権保護された作品の一部を引用したり、生成AIを活用してその作品に基づく補助的な素材を生成したりする場合でも、著作権者の許可を得る必要がありません。
この規定は、教育を目的とした公平で広範な知識の普及を支援するために設けられたものです。ただし、この適用範囲は教育機関や教科用図書に限られ、商業目的や他の用途での利用には適用されないため、利用条件を明確に理解しておくことが重要です。
生成AIで生成したものは著作物に該当するのか
引用元:https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf
こちらでは、生成AIで生成されたものは著作物として扱われるのか、著作権侵害になるのかを2つの軸で解説しています
類似性
生成AIで生成されたものが著作物として扱われるかどうかは、「類似性」が一つの基準です。
著作物として認められるためには、生成されたコンテンツが独自性を持ち、創作性が認められる必要があります。しかし、生成AIが作成した内容が既存の著作物と極めて類似している場合、独自性がないと判断され、著作物としての権利が認められない可能性があります。
例えば、生成AIが過去に学習したデータをそのまま模倣するような形で文章や画像を生成した場合、それが既存の著作物とほぼ一致していれば、独自性を主張するのは難しくなります。
一方、元の著作物にインスピレーションを受けつつも、明確に新しい創作性が加えられている場合は、著作物として扱われる可能性があります。このように、生成物が既存の作品とどれだけ類似しているかを精査し、独自性を判断することが重要です。
依拠性
一方で、「依拠性」も判断基準に該当します。
依拠性とは、生成された作品が既存の著作物を基にしているかどうかを指します。具体的には、生成AIが既存の著作物を学習データとして使用し、その影響を受けた結果として生成物が類似性を持つ場合、その生成物は依拠性があるとみなされる可能性があります。この場合、元の著作物が著作権で保護されていれば、生成物が著作権侵害に該当するリスクがあります。
一方で、生成された作品が元の著作物からの独自性を十分に備え、既存の著作物に直接依存していない場合には、依拠性が認められず、独立した著作物として扱われる可能性があります。そのため、生成AIを利用する際には、使用された学習データの内容や生成物の独自性を慎重に確認し、依拠性の有無を判断することが重要です。
まとめ
生成AIが自動生成する画像や文章に対する著作権の取り扱いを正しく理解することは、安全かつ適切に活用するために欠かせません。
生成AIが著作権侵害に該当するのは、学習データや生成されたコンテンツが著作権で保護された素材を無断で基にしている場合です。例えば、著作権を持つ作品を許可なく学習し、その影響で類似性の高いコンテンツが生成されると、侵害とみなされる可能性があります。
一方、個人的な利用や適切な形式での引用、または教科用図書への利用など、法律で特例が認められる場合は侵害に該当しません。これらのケースを理解し、正しく生成AIを活用していきましょう。
以下では、生成AIの問題点や利用時の注意点についても詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。