カスタマージャーニーとは、顧客が商材を知るところから、情報を集めて購入し、利用した後、再購入に至るまでの流れを旅路に例えたものです。
この旅路を可視化したものをカスタマージャーニーマップと呼び、フェーズごとに顧客の行動や心理を分けて分析し、それぞれのタイミングでどのような対策を行うか明確にします。
このページでは、カスタマージャーニーの概念や目的を初心者の方にもわかりやすく解説しています。具体的なカスタマージャーニーマップの作り方をサンプルと一緒に説明していくので、そのまま転用してお使いいただけます。
カスタマージャーニーを作成する上で注意すべきポイントを確認しつつ、ターゲットとなる顧客と取り扱う商材を結び付けるマーケティング戦略を組み立てましょう。
この記事でわかること
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客の商材に対する思考や行動を時系列に沿って可視化したものです。
具体的には、顧客が商材と出会い、興味を持って情報を集め、複数の他社商材と比較した上で購入を決意し、実際に利用した後に満足してもらい再購入や友人、知人などへ情報拡散をしてもらうまでの流れのことです。
この間に、顧客がさまざまな「体験」をすることから旅に例え、カスタマージャーニー(日本語:顧客の旅)と呼ばれます。
カスタマージャーニーは古い?
顧客が商材を購入し、継続的な利用を続けるまでの流れはカスタマーエクスペリエンス(Customer Experiecne、CX)と呼ばれるもので、その設計にカスタマージャーニーが必要になります。
インターネットが普及しはじめる20世紀末ごろに生まれたカスタマーエクスペリエンスを利用したマーケティング戦略は、アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラー(Philip Kotler)の著書、マーケティング4.0で紹介されたことで認知度が高まります。
それから四半世紀が過ぎた今、「カスタマージャーニーはもう古い」「Webマーケティング全盛時代にそぐわない」という声もあるようです。
インターネットを活用すれば、自宅やオフィスに限らず、外出先でもスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使って情報を得ることができます。そのため、顧客は必ずしもカスタマージャーニーに沿って行動するとは限らず、別の経路で購入に至る場合もあります。例えば、Web広告でお得なキャンペーン情報が目に入ると、カスタマージャーニーを経ずにその場で商品を購入することもあります。
しかし、カスタマージャーニーは顧客の思考や行動に合わせ作られるものです。そのため、上記のようなWeb広告による購買行動もカスタマージャーニーの一環であり、こうした購買に至るまでの行動の変化を含め、商材の購入がゴールであることに変わりはありません。
そのため、カスタマージャーニーが古いということは決してなく、Webマーケティングにおいても重要であり、正しく活用すれば高い効果を期待できます。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーを語る上で欠かせないものが、カスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップとは、カスタマージャーニーを作成する際、顧客の心理が時系列によって変化していく様を表にしたものです。
例えば、①顧客と商材の出会いから、②興味を持ってもらい、③情報を集めることで購買意欲を高め、④複数の選択肢を比較しながら、⑤自分に合ったベストの商材を選びます。さらに、⑥実際に使用し、満足度が高ければ再購入や情報の拡散に至ります。
具体的にカスタマージャーニーマップのサンプルを作成してみました。
あくまで簡単な情報のみを掲載したカスタマージャーニーマップですが、このように可視化したことで、どのようなものかイメージは伝わったのではないかと思います。
カスタマージャーニーの目的
では、カスタマージャーニーを作成する目的は何なのでしょうか。ここでは、カスタマージャーニーを作成する目的を3つに分けて紹介します。
顧客の検索意図をより深く理解できる
1つ目のカスタマージャーニーを作る目的は、顧客の検索意図を深く理解できるからです。
カスタマージャーニーを作成すると、顧客の思考を段階ごとに把握できます。顧客が商材に関わるきっかけや興味を持って調べようとする際に、何を考え、知ろうとしているか、客観的に理解することができます。
検索意図を把握することは、SEOを含むWebマーケティングにおいても非常に重要です。
カスタマージャーニーを作成することで、商材の購入に至るまで、ユーザーの心理が変化するそれぞれの段階でどのような検索意図を持っているか、深く理解することができます。
顧客の心理変化に合わせた施策を明確化できる
2つ目の目的は、顧客の心理変化に合わせた施策を明確化できるからです。
商材購入に至るまで、顧客の心理は変化します。それぞれの心理に合わせたアプローチすることで、商材の購入を促すことができます。例えば、まだ商材を利用することで悩みを解決できるものの、その存在を知らない顧客には、インターネット検索履歴やSNSの登録情報によって表示されるWeb広告を利用することで、商材を認知してもらうことができます。
このように、カスタマージャーニーを作成することで、顧客の心理変化に合わせた明確なマーケティング施策を用意できます。
社内で共通認識を持てる
3つ目の目的は、社内で共通意識を持てるためです。
マーケティングでは、商材の開発から告知や販売、カスタマーサービスまで共通認識を持つことが重要です。例えば、開発部は悩みを解決するための商材を作成します。営業担当はいかに悩みが解決できるかをアピールし、販売します。顧客から問い合わせがあれば、悩みを解決できることを伝えることで購入意欲を高めることができます。
このように、カスタマージャーニーを作成することで、社内で共通認識を持ち、一貫性のある対策を打つことができます。
顧客の信頼獲得につながる
4つ目は、顧客の信頼獲得につながるからです。
カスタマージャーニーを作成すると、顧客の信頼変化を段階的に俯瞰することができます。それぞれの段階で顧客に対し、適切なアプローチが出来ていれば、商材に対する購入意欲が高まります。また、購入後の顧客対応を含め、一貫性のある対策を行うことで商材や自社に対する信頼を得る事ができます。
もし、いずれかの段階でカスタマージャーニーから外れた案内をしてしてしまうと、違和感を感じた顧客は商材の購入をしないだけでなく、信頼を失う可能性にもつながります。
顧客の信頼獲得は、商材の購入だけでなく、認知拡大や口コミなどによるステルスマーケティングにおいても重要です。
マーケティング戦略を立案する際は、カスタマージャーニーを作成し、顧客の心理に合わせたアプローチを行い、商材や自社の信頼獲得につなげましょう。
カスタマージャーニーマップの作り方
それでは、カスタマージャーニーマップの作り方を紹介します。ここで紹介する手順を踏めば、初心者の方でもカスタマージャーニーマップを作成できるのでぜひ、トライしてみてください。
ペルソナを具体的かつ明確にする
まず、商材を購入してもらうターゲットとなる「ペルソナ」を設定します。ペルソナとは、商材の理想的な顧客像を具体的に想定した人物像のことです。
ペルソナを設定する際は、主に以下の項目を具体化します。
- 性別
- 年齢
- 職業
- 年収
- 休日の過ごし方
- 現在の悩み
商材をアピールするターゲットが明確になることで、心理変化に合わせた段階ごとのアプローチ方法を選びやすくなります。
フレームを作成する
次に、カスタマージャーニーマップの型枠となるフレームを作成します。
先に紹介したカスタマージャーニーマップに段階(フェーズ)とそれぞれに合わせた施策の項目を加えたものです。縦軸は顧客の思考や行動、接点に変更し、横軸に時系列によって変化するフェーズ(段階)を認知、興味・関心、教育、比較・検討と購入、利用に変更しています。
ペルソナの行動や感情を洗い出す
続いて、各段階での顧客の思考や感情、取るであろう行動を入力します。
担当者同士でブレストを行い、リアルなカスタマージャーニーを目指します。それぞれの段階における顧客との接点がある部署に協力してもらうと、より現実に近いものになります。また、ペルソナと同じような年齢や性別、悩みを持つ同僚からの意見も重要になります。
その他、ペルソナの行動や感情を入力する際、新規顧客との商談時にヒアリングすることや既存顧客へアンケートを取る方法も効果的です。
ペルソナとの接点および施策を策定する
フレームの縦軸・横軸が入力したら、ペルソナと商材との接点を探ります。
Webサイトや広告、SNS、展示会など、どのようなチャネルで顧客が商材との接点を持つ可能性があるか、具体的な情報を入力します。その上で、接点ごとの施策を検討し、明確化します。例えば、まだ商材を知らない顧客と、すでに商材を知っており、購入意欲が芽生えている顧客は、接点もそれに対する施策も異なります。
各段階ごとの検索意図を分析し、最適な対策を用意しましょう。
PDCAを回し施策を改善する
ここまでの流れで、カスタマージャーニーマップの基本形はできあがっているはずです。あとは、各施策に対してPDCA(Plan-Do-Check-Action)を繰り返し、失敗した部分は反省を活かしつつ、成果につながるものを残し、各項目における最善策を見つけ出しましょう。
また、結果に応じて適宜、カスタマージャーニーマップを見直すことも重要です。
カスタマージャーニーを作る際の3つの注意点
続いて、カスタマージャーニーを作る際、やってしまいがちな3つの注意点を紹介します。
企業目線で作成しない
カスタマージャーニー作成時の注意点、1つ目は、企業目線でカスタマージャーニーを作成しないことです。
カスタマージャーニーは、顧客視点で作るからこそ商材を購入するまでの顧客の心理や行動の変化がわかります。企業目線でカスタマージャーニーを作ってしまうと、どうしても営業意識が強くなってしまい、顧客の思考や取るであろう行動が見えづらくなります。また、営業のみを意識してしまうと、顧客に売りたいものを押し付ける形になり、顧客が求めるものが何かを無視してしまう可能性もあります。そうしたアプローチは、成約率を下げるだけでなく、商材や自社への信頼を失うことにつながります。
カスタマージャーニーは、1人の顧客になったつもりで「何を知りたいか」、「どういうことが出来ると嬉しいか」を考えながら作成しましょう。
最初から細かく作り込み過ぎない
2つ目の注意点は、最初から細かく作り込みをしないことです。
前提として、カスタマージャーニーに「正解」はありません。また、カスタマージャーニーの型枠は同じでも、細かな思考や行動、それに対する施策はペルソナごとに異なります。
そのため、カスタマージャーニーは出来る限りシンプルなものを作成し、施策を打つことを優先させます。実際に施策を打ち、結果に合わせて内容をブラッシュアップさせ、ベストなカスタマージャーニーを生み出すことが最も重要です。
最初から細かく作り込みすぎてしまうと、作成の途中で挫折したり、柔軟な対応が出来なくなったりする恐れがあるので注意してください。時間をかけすぎずシンプルなカスタマージャーニーを作り、それに従った施策を打って改善し続け、最善の結果を得るよう心がけましょう。
カスタマージャーニーの作成で満足しない
3つ目の注意点は、カスタマージャーニーを作成したことで満足しないことです。
シンプルなカスタマージャーニーであっても、作成には時間を要します。時間をかけて作成していると、いつの間にか「カスタマージャーニーを作ること」が目的になってしまうことがあります。
カスタマージャーニーは、マーケティング施策を打つための準備に過ぎません。作成したカスタマージャーニーに沿った施策を打つことが重要であることを忘れないでください。
ペルソナの設定やカスタマージャーニーマップの作成などの作業そのものに満足せず、そこから「最善のカスタマージャーニー完成に向けスタートする」ということを理解しておきましょう。
【テンプレート紹介】カスタマージャーニーマップの例
カスタマージャーニーマップを作成するにあたり、実際に企業で使われたカスタマージャーニーマップのサンプルを3つ、紹介します。業界やペルソナなどの違いはありますが、自社のカスタマージャーニーマップ作成に向けたインスピレ―ション獲得にお役立てください。
中部国際空港セントレア
引用元:https://noren.ashisuto.co.jp/seminar/report/1187443_1574.html
1つ目は、愛知県の中部国際空港セントレアがWebサイトを立ち上げる際に作成したカスタマージャーニーマップです。
横軸を時系列(フェーズ)、縦軸にユーザーの思考や行動、インサイトが並んでいます。週末に楽しめる場所を探すカップルが空港でも遊べることを知り、何ができるかを確認した上で、どうすれば到着できるか、また到着後に満足してもらえる情報とは何かをそれぞれの段階に対する施策としています。
非常に分かりやすいサンプルなので、初めてカスタマージャーニーマップ作成にチャレンジする初心者の方はぜひ、参照にしてみてください。
スターバックス
2つ目は、コーヒーショップ「スターバックス」のカスタマージャーニーマップです。
これまで紹介したカスタマージャーニーマップと見た目の違いはありますが、上段のStageが段階(フェーズ)、下段のActivityがペルソナの取る行動となっています。
お店に向かう顧客が友人に電話し、来店後は友人と席を見つけてオーダー、列に並んで支払いを済ませ、飲み物を受け取って席に着くまで、非常に細かく顧客の心理変化を記載しています。最下部には、顧客の各段階ごとの心理変化として、抱えるであろう悩みやトラブルに触れ、満足度の変化を示しています。これらを解決する施策を打つことで顧客満足度を高め、さらなる集客やブランドに対する信頼度獲得を目指しています。
飲食関係のビジネスを立ち上げる際に役立つサンプルとなっています。
レイルヨーロッパ
引用元:https://www.uxforthemasses.com/wp-content/uploads/2017/01/RailEurope_AdaptivePath_CXMap_FINAL.pdf
3つ目は、ヨーロッパの鉄道チケットを販売するレイルヨーロッパのWebサイト立ち上げに、Adaptive Pathというコンサルティング会社が用意したカスタマージャーニーマップです。
横軸は旅行に関する時系列ごとの段階(フェーズ)、縦軸はそれぞれの段階におけるユーザーの心理や思考、取るであろう行動と、それぞれの接点で顧客に対し、何を考えるべきかが記載されています。
旅行を計画し、鉄道チケットを予約、実際に鉄道を利用してもらい、その後、利用しなかったチケットの払い戻しについて言及しており、それぞれのタイミングでどのように対応すれば顧客満足度を高めることができるか、質問形式で並んでいます。
上記の3つの事例からもお分かりいただけるように、カスタマージャーニーマップの基本的な枠組み、ペルソナの設定と段階(フェーズ)および心理や行動の変化、それらに合わせた施策の準備という枠組みに大きな変わりはありません。
基本的な枠組みからカスタマージャーニーマップを作り、その内容に従って施策を実行する中で、適宜アップデートしつつ、実際に運用してみましょう。
まとめ
カスタマージャーニーおよびカスタマージャーニーマップの目的や作り方について解説しました。
インターネットが普及する頃からマーケティング業界で使われているカスタマージャーニーを「古い」と考える人もいらっしゃるようですが、Webマーケティングにも通用する重要な考え方です。
カスタマージャーニーを作成すれば、商材と顧客との接点ごとに異なる検索意図を分析し、それぞれに最適な施策を打つことができます。また、「売り手」の発想でなく「買い手」の立場で、自社との接点を考えることで、課題や改善点が見えてきます。
カスタマージャーニーマップを作る際のポイントは、初めから作り込みすぎないこと。シンプルなカスタマージャーニーマップを作成し、その内容に従った施策を実行すること、およびその結果をデータ化し、次に活用することで最善の施策を見つけることです。
これからWebマーケティングにカスタマージャーニーを活用しようとお考えの方は、ぜひこのページで用意したシンプルなカスタマージャーニーマップを参考にし、段階(フェーズ)に合わせた施策をお試しくださいませ。
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